それは残された詩の最後の一片
空は静かに
風は黙って

それぞれがそれぞれで、朽ちていく


足元に広がるのが
たとえば底の見えない水であっても
頭上にぶら下がるのが
星の名を騙る錆びた銀の残骸であっても

世界は変わらずに満ちている


おろかな言葉だ
でもそれ以外に私は知らない


忘れて、どうか
そして戻らないで


 
悲しい悲しいと、うわごとのように呟きながら
わたしはきっと

今日一番で世界が凍りました

きりきりと張られていく触れられない細い糸
その絡まりあう只中にちょうど私は存在しているのです

完璧な静止でした
目にしたものが声をなくして見惚れるほどの
圧されることもなく、浮き上がることのない
結晶のような静止でした

こおりがからりとくずれていき

液体となってしぼんでいくふゆのひ

きっとあのとき
わたしは待っていたのです

悲しい悲しいと呟きながら
あなたが笑ってわたしを去るのを

じっと待っていたのです



相変わらずで
曇り空だ
歩くのには不便しないので
変わりは無いけれども

お元気ですか
ぼくは相変わらずで

冬の雨は鬱々と
しかしどこか優しいのです
濃紺色の傘を差し
ふとそんなことを考えます

はいいろはいいろ、はいいろ

こんなに塗りつぶされては
もうあなたの輪郭もおぼろげじゃあないか
手が届かなくなってしまうではないか
いや、

果たしてそれは

この雲のせいであろうか


あのね、言ったことはないだろうけれど

夢見ていたんですよ、あのとき
あなたの隣で

たった一日だけの陽だまりを
それは春の陽光でした
今から冬だというのに、ぼくは春を夢見ていたんです

だからでしょうか
なんだかぼくはほかの人よりも
この冷たさがきんきんと
染み入るようで唇を噛むのです

お元気ですか
ぼくは相変わらずで


あなたの居場所はいま、春ですか

 
悲しい悲しいと呟きながら
私は何を待っていたんだろうか
所詮それは
無機質なレンズから覗いただけのパノラマに過ぎなかったのだ、
言いたげに
コップの中の氷が不服そうに鳴る

窓の外は
思いのほか綺麗で
鮮やかで
晴れた穏やかな光を
手を伸ばして躍起になる緑が目に痛くて


なんでもないよ
ただ
なきたかったんだ
だれかにすがって
おもいきり、こどもみたいになきたかったんだ


 

今まで気づかない振りをしていただけで
本当は何よりもいちばん、それはおそれていることだった
あなたの存在が声高に静かに私を追い詰める
目をそむけさせないように

迫っている
すぐ目の前にいる
じりじりと距離を狭めながら無情を仮面に貼り付けて
どうか、もう少し速度を緩めて
立ち止まっていて欲しいのだ
あなたの前に、またきちんと立つことができるように

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